患者さんと共有する目標は「歯を残す」ことです。
従来の歯科医療は主にむし歯で穴が開いた歯を削って詰めたり、歯周病の進んだグラグラした歯を抜いて入れ歯を入れるという外科的な処置、なくなったところの補修を中心に行われてきました。
このような治療をすることにより、むし歯や歯周病が治ったと思いがちですが、果たして本当にこれで治ったのでしょうか?そして、私たちの本当の目標が達成できるのでしょうか?
よく考えてみると、歯を削ることや抜くことは病気の結果に対する処置でいわゆる修理に過ぎません。病気の原因(背景)には介入していないのです。このままでは、病気は再発し、むし歯はもっと大きくなり、歯周病も進行します。いつまでも病気を治すことの繰り返しになります。
すなわち、このような取り組みは、「歯を残す」ことにつながりません。年をとると歯を失うという従来通りの流れになってしまうことが多いので
す。
より多くの歯をより健康に残すことができれば、人生の質が上がります。
それを実現するために最も大切なのが、
病気の予防(リスクマネージメント)と
メインテナンス(リスクマネージメントの継続)
だと考えます。リスクマネージメントとは、病気の発症と進行を最小限にするために、具体的な情報をもとに、管理していくことです。
すなわち、健康を守り、より健康な状態を目指していく。すなわち、健康にスタンスを向けていくことが重要です。健康にスタンスを向け、メインテナンスを継続していくことが「歯を残す」ことに確実につながります。
メインテナンスを継続し、「歯を残す」ことができる可能性を高めていくためには
メインテナンスのスタート時点での環境、条件がとても重要です。
例えば、子供たちであれば、20歳で、健康な歯と健康な歯ぐきとバランスのいい噛み合わせが達成でき、歯を大切にする気持ちやメインテナンスの重要性、歯を守るための自分にとっての最良の方法が、身に付いていれば、成人になってからの定期的なメインテナンスにより、多くの歯を残すことが可能なことは明らかです。子供たちと、健康な20歳を目指して頑張ります。
また、成人の方のほとんどは、いろんなリスク(病気になりやすい要素)と現実の問題(治療の必要な虫歯や歯周病、かみ合わせ)をかかえ、さらに自分のことに関して不十分な情報のもとにあります。その状態のまま、定期的に歯科医院を訪れて歯のお掃除をし続けても、年齢とともに問題が大きくなっていくのです。
そこで、メインテナンスのスタートする時点での状況を少しでも良くすることがとても重要なのです。すなわち、生涯、より多くの歯を健康に残すために、メインテナンスのスタート時点のお口の環境をできるだけベストに持っていく必要があります。
カリエスリスクを小さくする
歯周病のリスクを小さくする
治療が必要な、虫歯や歯周病、かみ合わせの問題をなくす
効果的なホームケアを実施できる環境を獲得する、
効果的なホームケアの方法を理解して実践している
自分のお口お状況を正確に理解できている
メインテナンスの重要性を理解し、実践できている
など
これらを患者さんと私たちがそれぞれの役割を果たしながら、メインテナンス開始時点で実現することが、「歯を残す」可能性を最大にします。
そのできるだけ有利に、メインテナンスのスタートラインにつくための準備を、メディカルトリートメントモデルという考え方のもとでしていきます。
メディカルトリートメントモデルとは、治療の流れに医療(医科)の観点を導入した診療モデルで、いかに有利なメインテナンス環境を作っていくかが目標です。
例えばお腹が痛いとします。病院に行くと、まずは様々な検査を行います。検査の結果、まずは内科的に薬や食事療法などで治していきます。それでも治らない場合にはじめて外科的に治します。お腹に病気があるからといって、すぐに胃を切除したり、切除した胃に何か材料を詰めたりはしません。
これを口の中の病気に置き換えて考えてみます。
口の中にむし歯や歯周病がある場合、すぐに削るという外科的処置が本来の治療でない事はお腹の病気の例で容易にわかります。削る前には正確な検査と診断が必要です。すべての検査、治療は、より多くの「歯を残す」につながらなければならないのです。何度も外科手術の繰り返しでは、決して健康な体は得られないのと同じように、何度も歯を削るを繰り返しても、「歯を残す」にはつながらないのです。
病気の原因を知り、原因の要素をできるだけ減らし、”体の持つ健康に向う力”が最大限に発揮できるようなお口の環境をつくることこそが、むし歯や歯周病の治療の本質で、病気の進行を停止すると共に再発を防ぐものです。そして、健康な環境ができ、より健康な状態に向うことができるのです。そして、このような改善された環境のもとで、現在の優れた歯科医療の技術を使って、壊れた歯を修復することは、より確実に「歯を残す」に繋げていくことができるのです。
より有利なメインテナンスのスタートを切るためのメディカルトリートメントモデルをまとめると
1.現状の把握:検査をして、お口の情報を知る
2:現状の説明:虫歯や歯周病が発症した原因を知り、ご自身の現状を確認し、今後の目標を考える
3.虫歯や歯周病のリスクを知り、リスクを最小にするための対策をとる
お口の中をできるだけ清潔な状態にする
4.改善の状況を確認し、メインテナンス開始時点までの目標の再確認をする
5.虫歯や歯のないところのかみ合わせを回復するための治療をする
ホームケアのしやすい環境を整える
その他ベストな環境を整える
6.改善目標の達成度を確認:治療が済んだ後は、その治療の有効性を確認(再検査)し、メインテナンスのスタートする時点での状況をベストな状況に持っていけたかどうかを確認します。
7.メインテナンスのスタート:健康をさらに健康にし、「歯を残す」ためのメインテナンスをスタートし継続していきます。
この様な流れ(メディカルトリートメントモデル)に沿って診療をすすめ、少しでも有利なメインテナンスのスタートを切ることが、健康な歯を残すことにつながります。私たちの使命は、健康な「歯を残す」ことです。これまで、年を取ると入れ歯になっていく人多かったのは、
病気の原因が取り除けていなかったこと
メインテナンスができていなかったこと
適切な環境のもとでのメインテナンスのスタートが切れていなかったこと
からなのです。
今まで、病気に向いていたスタンスを、生涯健康でいるために、生涯歯を残すためにどうすればよいかという健康に向いたスタンスに変えることが、とても重要だと考えます。そして、メインテナンスを継続し、結果として生涯健康な歯を残すことができれば、そのことが皆さんにとっての真の利益であり、最大の利益だと考えます。
視点をかえ、スタンスを変えれば、現在の世界基準の歯科医療では生涯「歯を残す」ことが可能です。日本の歯科医療が世界基準になり、さらには世界一になるように、私たちの診療室から多く人々の「歯を残す」を実現していきたいと考えています。